めぐり東京都調布市にある「深大寺(じんだいじ)」。かつては静かで落ち着いた古刹として知られていたこの場所が、今、10〜20代の若者でにぎわっています。
週末の参道には行列ができ、SNSには「#深大寺デート」「#逆映えスポット」といった投稿があふれ、まるで“原宿”のような賑わい。
しかし、派手な観光地化とは一線を画す“静けさ”が、このブームの核心にあります。
この記事では、若者を惹きつける深大寺の魅力と、SNSを中心に広がる“逆映え”トレンドの真相を探ります。
深大寺ブーム再来|「原宿みたい」と言われるほどの賑わい
参道が若者でにぎわう背景
ここ数年、深大寺の参道には週末になると若者グループやカップルが目立つようになりました。
都心から電車で1時間圏内というアクセスの良さに加え、自然に囲まれた落ち着いた雰囲気が「ちょうどいい癒しスポット」として注目を集めています。
「深大寺TikTok」で一気に火がついた理由
転機となったのは、2023年頃からTikTok上で拡散された「#深大寺デート」動画。
苔むした石段や湧水の音をバックにした“静かな映え”映像が人気を呼び、「派手じゃないのに心が落ち着く」と共感を集めました。
動画の総再生数は累計で2000万回を超え、SNS世代の間で「深大寺行ってみたい!」という声が急増。
まさに、デジタル時代の新しい観光ムーブメントの象徴です。
僧侶も驚く「訪問者10倍」のインパクト
深大寺(じんだいじ)の僧侶によれば、「ここ1〜2年で若い参拝客が10倍になった」とのこと。
境内の茶屋や土産物店もリニューアルを進め、伝統とモダンが調和する新しい風景が生まれています。
それでも、寺としての静謐な空気を守るための工夫も欠かさず、訪れた人が“喧騒の中にある静けさ”を体験できる場所として進化を続けています。
“映え”から“逆映え”へ。SNSトレンドが変化中
「自然界隈」がキーワードに
SNSのトレンドは今、“派手な映え”から“素朴で落ち着く映え”へ。
いわゆる「自然界隈(じねんかいわい)」と呼ばれるムーブメントが、Z世代の間で浸透しています。
この流れに深大寺は完璧にフィット。歴史ある建物と自然のバランスが、過度な演出をしなくても「絵になる」と支持されています。
「派手さより癒し」を求めるZ世代の心理
Z世代の旅行観光トレンドを分析するリクルートの調査では、「派手より落ち着く」「自然と人の温かさに触れたい」と答えた人が7割を超えました。
日常的に情報に追われる彼らにとって、深大寺の静かな空間は“心のデトックス”の場。
インフルエンサーが投稿する写真にも、鮮やかな加工より“素の色”を活かしたものが目立ちます。
なぜ“逆映え”が共感を呼ぶのか?
“逆映え”とは、過度な演出を避け、素朴さや自然体を重視する新しい映えの形。
「頑張ってないのに美しい」「何もないことが尊い」という価値観が、現代の若者に刺さっています。
深大寺の湧水や木漏れ日の中で撮られた写真は、その象徴。
SNS上では「#逆映え」「#静かな時間」などのタグが急増しており、トレンドの中心に深大寺が位置しています。
深大寺で体験できる“逆映え”スポット


苔むす石段と湧水が生む静かな美
深大寺の魅力の一つが、歴史を感じさせる石段と、そこを包み込むような苔の緑。
写真を撮る人々の多くは、あえて人物を小さく写し、自然の存在感を際立たせています。
湧水の流れる音が聞こえるだけで、心が落ち着くと評判です。
ラムネ片手に写真を撮るのが今どきスタイル
参道の茶屋では、昔ながらの瓶ラムネが人気。
SNS上では「ラムネ×苔×石段」の組み合わせが“逆映え三種の神器”として話題に。
派手なスイーツではなく、どこか懐かしい飲み物を持って撮ることで、「わざとらしくない映え」が生まれています。
緑に囲まれた「らくやき」体験がSNSで大人気
深大寺参道の中ほどにある陶芸体験スポット「らくやき 深大寺工房」では、自分だけのカップや皿を作ることができます。
「手作り体験×自然×癒し」の三拍子が揃い、Z世代女子の定番コースに。
制作過程を動画で撮ってSNSにアップする人も多く、まさに“体験が映える”時代を象徴しています。
陶芸体験「むさし野深大寺窯」の行列が象徴する新しい観光
自分で絵付けできる「らくやき」はなぜ人気?
「むさし野深大寺窯」では、素焼きの器に自由に絵付けができる体験が大好評。
観光客の約6割が若者というデータもあり、土と触れ合う時間が「癒しの非日常」として支持されています。
また、仕上げた作品をその場で焼いて持ち帰れる点も魅力。手軽で本格的な“プチ陶芸”体験です。
「世界で1個の思い出」を求める若者心理
Z世代は「シェアよりパーソナル」を重視する傾向が強くなっています。
画一的な映えより、「自分だけの物語」を表現できる体験に価値を見出すのです。
深大寺窯で作った器に描かれた拙い絵柄も、その人の記憶の一部として輝きます。
整理券必須!混雑を避けるおすすめ時間帯
人気が高いため、週末は午前中で整理券が終了することも。
ゆっくり体験したい場合は、平日の午前10時〜11時台が狙い目です。
また、紅葉シーズンやGW期間は予約制イベントも開催されるため、事前チェックをおすすめします。
深大寺が“ちょうどいい旅先”として選ばれる理由
電車で1時間、日帰り小旅行に最適
新宿から京王線とバスを使えば約1時間。アクセスの良さが、深大寺人気の土台です。
遠出せずに“旅気分”が味わえる場所として、大学生や社会人の週末リフレッシュ先に選ばれています。
浅草より落ち着く「癒し×写真×体験」のバランス
同じ都内の観光地・浅草が「映える派手さ」で人気なのに対し、深大寺は「癒しの静けさ」で支持を拡大中。
写真、グルメ、体験のすべてが“ちょうどいい”。
疲れを癒やしつつ、SNSにアップできる小さな感動を得られる点が、Z世代にぴったりです。
自然と歴史が共存する東京のオアシス
深大寺は奈良時代に創建され、約1300年の歴史を持つ古刹。
境内には湧水が流れ、周囲には武蔵野の自然が広がります。
「都会のすぐそばに、こんなに静かな場所があるなんて」と驚く人も多く、東京の中の“オアシス的存在”としての魅力が再認識されています。
まとめ|深大寺に集まる若者たちは「癒しの逆映え」を求めている
SNSでは語り尽くせない“静けさの価値”
深大寺ブームの本質は、派手な映えではなく「静けさ」にあります。
写真や動画では伝えきれない空気感が、訪れた人の心を癒すのです。
その“感じる美しさ”こそが、今の時代に最も必要とされている価値ではないでしょうか。
次のトレンドは「心が映える」体験型観光
深大寺をきっかけに、“映える”の定義は確実に変わりつつあります。
これからの時代、求められるのは「心が映える」体験。
SNSの向こう側で、自分の時間をゆっくり感じる旅が、Z世代を中心に広がっていくでしょう。









