めぐり名古屋の地に鎮座し、一千九百年もの長きにわたり、人々の篤い信仰を集めてきた「熱田神宮」。
親しみを込めて「熱田さん」とも呼ばれるこの場所は、伊勢の神宮に次ぐ格式を誇り、三種の神器の一つである「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」がお祀りされていると伝えられる、日本にとって極めて重要な聖域です。
その広大な境内は「熱田の杜(あつたのもり)」と呼ばれ、街中にありながらも、一歩足を踏み入れると、清浄で厳かな空気に包まれ、まるで時が止まったかのような感覚を覚えます。
ここには、日本の神話と歴史が深く息づき、訪れる者の心を洗い、魂に静かな力を与えてくれる、特別なエネルギーが満ちています。
今回は、そんな熱田神宮の創建にまつわる壮大な物語や、謎多き三種の神器の神秘、そして広大な杜で心静かに祈りを捧げるための「とっておきのTIPS」を、心を込めてご紹介します。
日本の心の故郷ともいえるこの場所で、悠久の歴史と神々の息吹に触れる、スピリチュアルな旅へご一緒しましょう。
【熱田神宮を訪れる前に知っておきたい!とっておきTIPS】
悠久の歴史が息づく熱田の杜。
心静かに神々の気配を感じるために、ちょっとした準備と知識を携えていきませんか?
年間650万人以上が訪れるという熱田神宮。
その魅力を余すところなく感じ、心に残る参拝とするために、ぜひ知っておいていただきたいヒントをお届けします。


1.熱田の杜を深く味わうために
- まずは本宮へ、そして別宮八剣宮も忘れずに: 熱田大神(草薙神剣を御霊代とする天照大神)をお祀りする「本宮」への参拝はもちろんですが、本宮のすぐ近くにあり、同じく草薙神剣と深いつながりを持つ「別宮八剣宮(べつぐうはっけんぐう)」もぜひお参りください。
武運長久や勝利の神様としても知られています。 - 神秘の小径「こころの小径」を巡る: 2012年に一般公開された、本宮の裏手から清水社へ続く静謐な小径。
ここはかつて神職しか入れなかった神聖なエリアで、木漏れ日の中を歩けば、心が洗われるような清浄な気に満たされています。
途中にある 「清水社(しみずしゃ)」 では、奥の湧き水で肌を濡らすと美肌になるとの言い伝えも。 - 歴史の証人「信長塀」と生命力あふれる「大楠」: 桶狭間の戦いの前哨戦で勝利した織田信長が寄進したとされる 「信長塀」 は、日本三大土塀の一つ。
また、境内には樹齢千年を超えると言われる楠の巨木が7本あり、その圧倒的な生命力に触れるだけでもパワーをいただけます。
弘法大師お手植えと伝わる 「大楠」 は特に有名です。 - 「宝物館」で神剣の歴史と文化に触れる: 皇室からの御寄進品や、刀剣、古文書など、約6000点もの貴重な文化財を収蔵・展示しています。
草薙神剣そのものは非公開ですが、その縁の品々を通して、熱田神宮の深い歴史と文化に触れることができます。 - おすすめの参拝ルートと所要時間: 正門(南門)から入り、手水舎で身を清め、本宮、別宮八剣宮、そして時間があれば 「こころの小径」 や摂社・末社を巡るのが一般的。
じっくり見て回ると1時間半~2時間程度はみておくとよいでしょう。
2.心に残る授与品と、熱田名物の味


- お守り・お札: 家内安全、身体健全、厄除け、縁結びなど様々なお守りがあります。
特に草薙神剣にちなんだ勝負運向上のお守りや、日本武尊にちなんだ開運招福のお守りも人気です。 - 御朱印: 本宮、別宮八剣宮、そしていくつかの摂社でも御朱印をいただけます。
参拝の証として、また神々とのご縁を結ぶしるしとして、ぜひ。 - 名物「宮きしめん」と、参拝後のご馳走「ひつまぶし」: 境内には、名古屋名物きしめんを味わえる 「宮きしめん 神宮店」 があり、参拝後のひとときに気軽に美味しい一杯を楽しめます。
お土産用のきしめんも人気ですよ。
そして、熱田神宮を訪れたなら、ぜひ味わいたいのが名古屋めしの代表格 「ひつまぶし」 。
実は、ひつまぶしの発祥のお店とも言われる有名店 「あつた蓬莱軒」の本店が、神宮南門のすぐ近くにあるんです。
参拝を終えた後に、少し足を伸ばして、本場の味を堪能するのも、旅の素敵な思い出になりますね。
(大変人気のお店なので、時間に余裕を持って訪れるか、予約が可能か確認するのがおすすめです。)
3.訪れるならこの時期!熱田神宮の主な祭典
- 初えびす:1月5日 商売繁盛の神様 「えびす様」 のお祭り。
境内社の 「上知我麻神社(かみちかまじんじゃ)」 と 「大国主社(おおくにぬししゃ)・事代主社(ことしろぬししゃ)」 が中心となり、福熊手を求める人々で早朝から大変な賑わいを見せます。 - おほほまつり(歩射神事):例年1月15日夜 熱田神宮の摂社・ 高座結御子神社(たかくらむすびみこじんじゃ) と末社・ 氷上姉子神社(ひかみあねごじんじゃ) で、古式に則り執り行われる 「歩射神事(ほしゃしんじ)」 は、その独特な雰囲気から 「おほほまつり」 とも呼ばれ、知る人ぞ知る奇祭の一つに数えられています。
その年の豊凶を占うこの神事は、灯りの少ない夜の境内で、神職が厳かに弓を射た後、 「おーほっほっほ」 という独特の甲高い笑い声を上げながら進むと言われています。
この声は悪霊を祓い、豊穣を招くとも伝えられ、静寂の中に響き渡るその声と厳粛な行列の様子は、どこか神秘的で、日常とは隔絶されたような不思議な感覚にいざなうでしょう。
日中の賑わいや本宮の荘厳さとは全く異なる、熱田神宮のもう一つの奥深い顔に触れることができる、大変珍しい神事です。
もし機会があれば、そのミステリアスな雰囲気を遠くからでも感じてみてはいかがでしょうか。
(※夜間の神事であり、見学等については事前に確認が必要です。) - 熱田まつり(尚武祭・例祭):6月5日 熱田神宮で最も重要かつ盛大な祭典。
数々の神事のほか、武道大会の奉納、夕刻からは境内約350基の献灯まきわらに灯りがともされ、神宮公園からは華やかな花火も打ち上げられるなど、多くの人々で賑わいます。
その他、年間を通じて様々な由緒ある祭典や神事が行われていますので、訪れる前に熱田神宮の公式サイトで歳時記をチェックしてみるのがおすすめです。
熱田神宮とは?一千九百年の歴史を紡ぐ、草薙神剣の鎮まる地
悠久の時を超えて、神々が息づく杜へ。
その神聖な歴史の扉を、一緒に開けてみませんか?
熱田神宮は、愛知県名古屋市熱田区に鎮座し、地元の人々からは「熱田さん」として親しまれ、全国から多くの参拝者が訪れる由緒正しいお宮です。
その創建は景行天皇43年(西暦113年)と伝えられ、実に約1900年もの長きにわたり、この地で日本の歴史と人々の祈りを見守り続けてきました。
ご祭神は、熱田大神(あつたのおおかみ)。
これは、三種の神器の一つである 草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)を御神体(御霊代・みたましろ)とする天照大神(あまてらすおおかみ) のことであると伝えられています。
相殿には、 「五神(ごしん)」 と総称される天照大神、素盞嗚尊(すさのおのみこと)、日本武尊(やまとたけるのみこと)、宮簀媛命(みやすひめのみこと)、建稲種命(たけいなだねのみこと)がお祀りされており、これらの神々は皆、草薙神剣と深いゆかりを持っています。
約6万坪(約19万平方メートル)にも及ぶ広大な境内は「熱田の杜」と呼ばれ、樹齢千年を超える楠をはじめとする木々が生い茂り、都心とは思えないほどの静寂と清浄な空気に包まれています。
一歩足を踏み入れると、日常の喧騒を忘れ、心が自然と鎮まっていくのを感じるでしょう。
この杜全体が、神聖なエネルギーに満ちたパワースポットなのです。
草薙神剣の物語 – 日本武尊と熱田神宮創建の秘話
英雄の悲哀と、愛と祈りが織りなす壮大な物語。神話の世界に、そっと心を寄せてみましょう。
その息吹は、今も熱田の杜に…。
熱田神宮の創建と、その御神体である草薙神剣の物語は、日本の英雄伝説として名高い 日本武尊(やまとたけるのみこと) の生涯と分かちがたく結びついています。
草薙神剣は、元々は出雲の簸川(ひのかわ)で素盞嗚尊が大蛇・八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した際に、その尾から現れたとされる霊剣 「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」 です。
後に天照大神に献上され、皇位継承の証である三種の神器の一つとなりました。
この神剣が日本武尊の手に渡ったのは、尊が東国征討に赴く際、伊勢の神宮に立ち寄り、叔母である倭姫命(やまとひめのみこと)から授けられたことによります。
東国の相模国(さがみのくに)で、敵の策略により野火で焼き殺されそうになった際、日本武尊はこの 天叢雲剣 で草を薙ぎ払い、逆に火を放って難を逃れました。
この故事から、剣は「草薙神剣」と呼ばれるようになったのです。
東征を終えた日本武尊は、尾張国で現地の豪族の娘である 宮簀媛命(みやすひめのみこと) と結婚されます。
しかし、伊吹山の神を討伐するため、草薙神剣を宮簀媛命のもとに預けたまま伊吹山へ向かい、そこで病を得て薨去(こうきょ)されてしまいます。
夫君の死を深く悲しんだ宮簀媛命は、日本武尊の遺言に従い、預かっていた草薙神剣を熱田の地に社を建てて祀りました。
これが熱田神宮の始まりであると伝えられています。
つまり、熱田神宮は、日本武尊の武勇と悲劇、そして宮簀媛命の深い愛情と祈りによって創建された、物語に満ちた聖地なのです。
その後も熱田神宮は、織田信長が桶狭間の戦いの前に戦勝祈願に訪れ、勝利後に寄進した「信長塀」が現存するなど、歴史上の重要な局面で多くの武将からも篤い信仰を集めてきました。
三種の神器とその神秘 – 草薙神剣が持つ大いなる力
皇室の正統なるしるし、そして日本の国の魂とも言える三種の神器。
その一つが、今もこの熱田の地に秘められているという事実に、身が引き締まる思いがしますね。
日本の皇位継承において、最も重要とされるのが「三種の神器(さんしゅのじんぎ)」です。
これは、八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、そして熱田神宮にゆかりの深い 草薙神剣(くさなぎのみつるぎ) の三つを指します。
これらは、天照大神から瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天孫降臨する際に授けられたとされ、歴代天皇に受け継がれてきました。
- 八咫鏡: 天照大神の御神体ともされ、真実を映し出す鏡として、伊勢の神宮の内宮にお祀りされています。
- 八尺瓊勾玉: 大きな勾玉で、生命力や神秘的な力を象徴するとされ、現在は皇居の剣璽の間(けんじのま)に安置されています。
- 草薙神剣: 前述の通り、素盞嗚尊が出雲で 八岐大蛇 を退治した際に得た神剣で、武力や権威を象徴します。
熱田神宮にお祀りされていると伝えられています(皇居にも形代の剣があると言われます)。
これらの神器は、単なる宝物ではなく、それぞれが天皇の持つべき徳性(知・仁・勇など)や、国家の安寧、五穀豊穣を祈る祭祀の対象としての意味合いを持っています。
草薙神剣が熱田神宮に祀られているということは、この地が日本の国家にとっても極めて重要な霊的中心地の一つであることを示しています。
その御神威は、国家鎮護はもとより、武運長久、開運招福、厄除け、縁結び、家内安全など、広範囲に及ぶとされ、多くの人々がそのご利益を求めて熱心に祈りを捧げています。
神剣そのものを直接目にすることはできませんが、その神秘的な力は、熱田の杜全体に満ち満ちているのを感じ取ることができるでしょう。
熱田の杜で感じる、清浄な気と悠久の祈り
熱田神宮の広大な境内 「熱田の杜」 は、まさに都会のオアシス。
一歩足を踏み入れると、車の音も遠のき、清浄で厳かな空気があなたを包み込みます。
本宮へと続く参道は、玉砂利が敷き詰められ、歩むごとに心が静まっていくのを感じるでしょう。
樹齢千年を超える楠の巨木たちは、まるで神々の使いのようにそびえ立ち、その圧倒的な生命力と歴史の重みで、私たちを優しく見守ってくれているようです。
本宮での参拝を終えたら、ぜひ 「こころの小径」 へと足を運んでみてください。
ここは、熱田神宮の中でも特に神聖な気が満ちていると言われる場所。
木漏れ日が差し込む静かな小径をゆっくりと歩けば、心が洗われ、魂が浄化されていくような不思議な感覚に包まれます。
途中にある 「清水社」 では、楊貴妃の墓の一部と伝えられる石塔に3度水をかけて祈ると願いが叶うと言われ、また奥の湧き水でお肌を清めると美肌になるという言い伝えもあり、女性に人気のスポットです。
また、境内には本宮や別宮八剣宮の他にも、多くの摂社・末社が点在しています。
それぞれに由緒があり、様々なご利益をいただけると言われていますので、時間に余裕があれば、ゆっくりと巡ってみるのも良いでしょう。
「宝物館」では、熱田神宮に奉納された数々の刀剣や古文書、皇室からの御物など、貴重な文化財を間近に見ることができます。
これらの品々を通して、熱田神宮が日本の歴史の中でいかに重要な役割を果たしてきたか、そして草薙神剣がいかに大切に守り伝えられてきたかを感じ取ることができるはずです。
熱田の杜での時間は、日常の悩みやストレスを忘れさせ、心に深い安らぎと清々しさをもたらしてくれます。
深呼吸をして、神聖な気に満ちたこの場所で、自分自身と静かに向き合う時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
おわりに:熱田神宮が紡ぐ、悠久の祈りと未来への光



一千九百年という、気の遠くなるような歳月。
熱田神宮は、日本の神話と歴史の重みをその身に刻みながら、草薙神剣の神秘と共に、この地に静かに鎮座し続けてきました。
そこは、英雄の魂を慰め、国家の安泰を祈り、そして私たち一人ひとりのささやかな願いを受け止めてくれる、限りなく優しく、そして力強い聖域です。
熱田の杜に満ちる清浄な気、樹齢千年の大楠の生命力、そして神話の時代から連綿と続く人々の祈りのエネルギー…。
それら全てが、あなたの魂を深く癒やし、未来へと踏み出すための確かな力を与えてくれることでしょう。
日本の心の故郷ともいえる熱田神宮への参拝は、私たち自身のルーツを見つめ直し、日本という国の成り立ちや文化の奥深さに改めて気づかせてくれる、貴重な機会となるはずです。
ぜひ一度、この神聖な杜を訪れ、草薙神剣の神秘と悠久の祈りに触れてみてください。
きっと、あなたの心に、清々しくも厳かな、そして温かい光が灯されることでしょう。









